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□鋼の化学成分とその影響
(参考文献:鋼材倶楽部編:新しい建築構造用鋼材、鋼構造出版、1998年)

○炭素(C)
 利点:鋼の強度を上げる。
 欠点:延性(伸び等)と衝撃特性を損なう。溶接性を悪くするので添加量が制限される。

○珪素(Si)
 利点:鋼の強度を上げる。脱酸作用がある。
 欠点:多量(0.5%以上)に添加すると、衝撃特性や延性が低下する。

○マンガン(Mn)
 利点:鋼の強度を上げる。延性、衝撃特性を上げる。脱酸作用がある。硫黄(S)の悪影響を抑える。
 欠点:多量(1.6%以上)に添加すると、衝撃特性や延性が低下する。

○リン(P)
 利点:多量(0.07%以上)の添加で鋼材の耐候性を高める。
 欠点:溶接性、冷間加工性、衝撃特性を劣化させる。凝固時に偏析しやすく、偏析による悪影響が大きい。

○硫黄(S)
 利点:切削性をよくする(機械構造用鋼の場合)
 欠点:鋼中のMnと結びついてMnS系の非金属介在物を形成し、鋼の清浄度を悪化させる。MnSは圧延により伸びて、衝撃特性や板厚方向の絞り特性を悪化させる。

○銅(Cu)
 利点:強度を高める、耐食性を高める
 欠点:熱間脆(ぜい)性を引き起こすので、含有量を制限する必要がある。溶接金属の高温割れを引き起こす。

○ニッケル(Ni)
 利点:添加によって鋼の衝撃特性を改善する
 欠点:高価である。

○クロム(Cr)
 利点:焼入れ性と強度を高める。耐食性、耐酸化性、高温強度を高める。
 欠点:溶接熱影響部を硬化させ、溶接低温割れを起こしやすくする。

○モリブデン(Mo)
 利点:焼入れ性と強度を高める。高温での強度を高める効果大。
 欠点:溶接熱影響部を硬化させ、溶接低温割れを起こしやすくする。

○バナジウム(V)
 利点:焼入れ性と強度を高める。
 欠点:溶接熱影響部を硬化させ、溶接低温割れを起こしやすくする。

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○ニオブ(Nb)
 利点:圧延時に結晶組織を微細化して強度と衝撃特性を高める。
 欠点:多量の添加により、溶接熱影響部を硬化させ、熱影響部の衝撃特性を悪化させる場合がある。

○チタン(Ti)
 利点:鋼中にTiNを形成して溶接熱影響部の衝撃特性を改善する。
 欠点:多量の添加により衝撃特性を劣化させる。

○ボロン(Bo)
 利点:0.001%程度の極微量で鋼の焼入れ性を高める。
 欠点:多量の添加により溶接割れ等が起こりやすくなる。

○カルシウム(Ca)
 利点:鋼中のSと結びついてCaSを形成し、S系非金属介在物を球状化する。

○アルミ(Al)
 利点:窒化アルミ(AlN)を形成し、鋼の組織を微細化して衝撃特性を高める。
 欠点:多量の添加により伸び特性を劣化させる。

○酸素(O)
 欠点:鋼中で酸化物系非金属介在物を形成する。

○窒素(N)
 利点:窒化アルミ(AlN)を形成し、鋼の組織を微細化して衝撃特性を高める。
 欠点:添加量が多いと衝撃特性が悪化する。とくにひずみ時効硬化による衝撃特性の劣化を大きくする。

○水素(H)
 欠点:鋼中の欠陥あるいはその周囲に集まり、水素割れあるいは水素脆化を起こす。また溶接時においては溶接低温割れを起こす。

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